一人ケイコを始めて早5ヶ月。
公演の為のケイコではなく、役者の地力アップのケイコ。
最初はとまどいながら始めたが、時間を気にせず気のすむまで出来るのが楽しい。
楽しければ自ずと上達する。上達すると欲が出る・・・
まあそんな具合に、公演のあてのない今のケイコに励んでいたが、ある時ふと思いだした事がある。
それは10年前、東日本大震災の時の話。
2011年の6月と11月の2回、縁あって宮城県牡鹿半島のある漁村の方々とお近づきになり、瓦礫の中で踊った。
その時、村の方々から「本当の漁師」と敬われている人の話を聞いた。
震災後、今までの日常〔あたりまえ〕を突然ひっくり返す災難の中、いち早く舟を出し漁を続けた漁師さん。
港も海も荒れて、商売にはならない状態でも海に出た。
その漁師さんは昔からの漁法で魚をとる人で、いわく「漁師の勘、腕がにぶるのがイヤだから」との事。
私はその話にものすごく感動した。
正に全身全霊、身体をかけて仕事してる人だと思った。
会って直接話を聞いたわけではない。
けれど及ばずながら私も、使わないとにぶる同じ身体を持つ役者として、今こそやりたい事をやりたいと思う。
その漁村とは2016年まで芝居や音楽で村の人と共に楽しむ演芸会を年に一度続けた。
やりたい芝居を、観たい人の前で、やりたい時にやる「出前芝居」の始まりでした。