原智彦演劇技術教室第1期は日曜日の「演劇の基」の他に、毎週月曜日、週1合計6回で歌舞伎メイクのコースも行った。

「40歳過ぎたら自分の顔に責任を持て」とよく言われる。

親からもらった蕾のような顔もやがて自分なりの花が咲くという事か。

人の心は顔に現れる。

客は舞台の役者のどこを見るか。

顔である、特に目を。

目は心の入り口。

人は真剣になると必ず相手の目を見る。

「目は口ほどに物を言う」

無言でも目はいつもしゃべっている。

心は一時もとまらない。

目をつぶっても閉じた瞼の裏で目玉は動いている。

かように目は顔の中で一番大事。

私はまず最初に目を描く。

これで「気持入魂」。

目に合わせて口を引く、そして最後に眉を引き全体の調子を整える。

歌舞伎ではメイクのことを「顔を拵える(こしらえる)」という。

顔を拵え、衣装かつらを着け身ごしらえが終わると、ごく自然に言い回し、身の振る舞いが自分でなく「役の人」になる。

この「役の人」になる技術の第一歩が「顔を拵える」技術。

教室では6回と短い期間ながら8名の人が熱心に取り組んだ。

舞台化粧とは、心の顔を描き出す事なので、本人しか書く事ができない。

他者に書いてもらうと不思議なことに描いた人の顔になるのだ。

私の舞台ではどんなに「ヘタ」でも本人に描いてもらう。

ヘタでも真実味がある、描いてもらった顔は何かよそよそしい顔になる。

教室で伝えたかった事は、化粧とは化けることではなく、「自分」と「役」が一体になる事。

心をさらけ出すには役のイメージを思い描ける事。

その絵を自分の顔のキャンパスに描きこむ事。

生身の人間に描くにはそれなりの道具とその道具を使いこなす手の技が必要だという事。

そのためには回数が大事。

ひとつの顔に最低100回くらいは描かないとダメ、結果が出ない。

何回も何回も何回も‥描いてようやく役の入り口にたどり着けると思う。

好きでなければできない事、それは同じ事を自分が納得できるまでやり続ける事、役者に必要な最も大切な能力である。

原智彦演技技術教室は「芝居編」「化粧編」共終了いたしました。

私の思い以上に面白かった。初めての人ばかりだったので、無限の可能性を発揮してくれた。

「人は皆天才である」の通りだった。

わたしもたくさんの勉強をさせてもらった。

アリガトウ生徒の皆さん!