今年早々インフルエンザにかかる。
高熱が出てフラフラする。
正月で医者は休み。
正月明けて熱は下がったが念のため医者へ行くと、「うっすらとインフルエンザの残りカスが見られます。一応インフルエンザを抑える薬飲みましょう。帰ったら飲んでください、すぐですよ。」と念を押されて家へ帰り、すぐ薬を飲んだ。
三日ほどでいつもの状態に戻る。
体温38〜40度が七日続きその間変な旅をした。
40度近くの高熱なんて記憶にない。
うわ言で目が覚めたり、オシッコがしたいのに出ない、視界がいつもと違う、ものがチカチカ光り輝いて見える‥
と言って、見えないものが見えたりする幻覚状態ではない。
少しずれたシュールな感じがするのだ。
ものすごく小さい時、熱を出して天井の木目が踊り出して笑った事を懐かしく思い出したりした。
十日の間で一番変だったのは、何度もうわ言の自分の声で眼が覚めたこと。
芝居のセリフをブツブツ、しかもそのブツブツ言っているセリフが今まで演った事のないものなのだ。
何度も同じセリフのブツブツで目が覚めた。
夢か現か幻か、このヘンテコリンなブツブツはひょっとしたらいつか演る芝居の予兆かもしれぬ。
でもどんなセリフだったか忘れた。
ちょっと嬉しい夢も見た。
パンク歌舞伎「地獄極楽」は、スーパー一座時代の岩田信市さんの台本を元に手を加えた作品。
岩田さんは一昨年に亡くなっている。
見てもらえず残念に思っていたせいか、その夢は、スーパー一座時代共に役者だった佐藤くん(地獄極楽でも客演してもらった)と変なコントを演ってるのを、岩田さんがあぐらをかいて、手をバンバン叩きながら大声で笑い転げている夢。
彼の嬉しい時に送る最大限の拍手だ。
ホッとした。
見にきてくれたんだ。
そして「怒って帰るんじゃなく、手を叩きに来てくれたんだ。」と独り言。
嬉しかった。
目を覚ますと、彼の声「オレを岩田信市と思うな。お客の代表だ。オレの目を信じろ。」
稽古場に鳴り響いた声を思い出した。
今年の正月は高熱フラフラだったけど、実はメデタイ正月だったんだ。