大鹿村には昔(40年くらい前)から「端っぽ歩いてる人」、
つまり変わり者、
何かにつけて少数派の人、
世を離れ一人自然に浸りたい人、
世を憂い儚い行く先を案じている人、
吟遊歌手に、特別な技術を持った人などなどがいる。
1970年代から端っぽを歩いている人達の新しい村ができた。
昔の平家の落人伝説のように。
サイモンさんは日本文化のプロフェッショナル、まぁ文人ですね。
私が彼を好きなのは、教養人と言われている人は好き嫌いをはっきり言わない人が多く会話が成り立たないが、
彼ははっきりしているからである。
会話が成り立つ数少ない文人です。
そんな彼が一番愛しているものは彼の家です。
彼の日本はこの家なんです。
4年前、彼から電話があって、
「私もいい年になって、これからは大鹿の皆んなに
もっともっと日本のオモシロイ物を見せてあげたいし、私も見たい。
原さん何か演ってくれませんか。」
それが始まり。
彼の家で私に何ができるのか。
そんなオモシロイ宿題をくれる、彼は私の先生です。
彼の愛してるのは、家ばかりでない。
アルプスの一番奥、手付かずの荒々しいまでの自然です。
私は昔山登りをしていたのでよく分かる。
「山脈の美しさ」
これは中々味わえるもんじゃない。
太古、地球ができた時の皺だ。
それが緑の樹々に覆われ横たわっている。
たった一人、抱えきれぬ緑の山脈を前に佇む時、
私はすべての言葉を忘れる。
無垢なる生命力に酔っ払う。
酔っ払って大地と一緒になる。
本当に美しいものを前にした時、
人は酔っ払いになるのかもしれない。