七月十五・十六日、長野県大鹿村「祭文亭」にて。

ここ南アルプスの赤石岳の麓にある「日本で一番山奥で一番小さい劇場」と言っている、

イギリス人サイモンさんのお宅「祭文亭」。

通い始めて4年、今年もやって来た。

何度も続けると飽きがくる。

山奥と言っても半端でない。

車で降りて5分くらい、人一人やっと通れるくらいの急坂を、

荷物担いで上り下り。

軟弱な者にはちときつい。

2泊3日、会社休むのも少しつらい。

昨年7本、今年6本、それに12月にはパンク歌舞伎。

少し力を溜めときたい。

いくつもの理由で「今年はパスしたい」と言う人もいて、

「どうしても行きたい」最少の人員で演ってきた。

4名(ハラプロ3人にゲストの琵琶演奏家)、車2台。

演目は琵琶と踊りで日本の古典「綱館」、琵琶弾き語り「平家物語の敦盛」、

歌舞伎十八番「外郎売り」の外道版DJ・ダンス付き。

小作品3本であったが、それぞれ「シンミリ」「ハゲシク」「コッケイ」と持ち味をしっかり出せた。

また、祭文亭の特色、明治に作られた古民家そのままの舞台に、

青色の幕一枚で演出できた事は嬉しい収穫だった。

今回は今までになく、楽チンで楽しかった。

1つには、少人数だった事。

人が少ないと大した事はできないから、大した事をしない事を大事にした。

身に付けるもの以外、照明用の工事用ランプ4個、幕2枚、カセットデッキ1台、つけ板1枚。

ケイコは琵琶との合わせ1回、

「外郎売り」はDJダンサー役者3名のアンサンブルの打ち合わせ2回、本番即興。

上出来だった。

お客も演し物が少し「?」なのか、いつもより少なかった。

その分「?」な事に興味あるポジティブな人が集まった。

初日は夜公演15名、終わった後のパーティで一人一人とゆっくり話せてよかった。

しかも芸について、表現について、色々双方向の話だったので身が入るし、

持ち寄ってくれた食べ物がそれぞれ自慢作である。

食いもんの話は滅法好きな私にはおいしい話ばかり。

中でも一番はキュウリの酒粕漬け。

ここ伊那谷の中央アルプス西側の木曽谷に生まれた私の故里の味だ。

本当久しぶりのあじだったので、存分に食った。

16日。

芝居が終わって帰る前に、

家よりさらに奥にキレイなところがあると言うので、

20分くらい車で行く。

つづら折りの危ない道を谷底へ降りる。

車で行ける所まで行って、後は足で降りる。

美しい沢だ。

急な所で足を滑らせたら流されてしまう。

泳いだのはサイモンさんだけだったが、

お孫さん2人は平気で水と遊んでた。

私は子供の頃を思い出した。

川でよく遊んだな、と。

この美しい谷の下流で今、リニアモーターカーのトンネル残土出口が作られている。

夢のような話だ。

が、本当に始まってしまった。

これが今の日本の現実である。