まずは芥川龍之介「藪の中」
6/2・6/3橋の下世界音楽祭にて
正に天然劇場だった。
会場はトヨタスタジアムと矢作川の間の河川敷北の端、メイン会場から徒歩5分。
竹やぶを背に草むらが舞台、川に下る土手が客席。
太い孟宗竹を2本横に並べたイスはなんともお尻に優しい。
周りは食べ頃の実が一杯の桑の林。
聞こえる音は風のささやきと、遠くに聞こえる祭りのざわめき。
藪越しの川面が夕陽に金色。
陽が落ちる頃、川面を渡る風が急に強くなる。
役者の笠の布が、着物の袖が、激しくはためく。
劇中の、人を殺めた盗賊、殺された男、残された妻。
三人三様の言葉は全くバラバラ。
バラバラでいてすべてが本当にも思える。
そして最後に七人の登場人物の心(魂)が天空に消える。
共に客も天を見る。
灯油ランプに照らされてゆっくり竹が揺らぐ。
そして暗闇。
…終わり…
「アリガトウゴザイマシタ!」の声で現実に戻る。
1000年も前へ行って帰ってきたような気分。
今年から新たに始めた「役者養成『虎の穴』」実験劇場、まずは大成功。
作品に副タイトルを付けた。
「無電力芝居」
音も灯りも全て生だった結果、
「暗闇」という素晴らしい灯りがあった。
いやむしろ、「闇」があるから「光」があるのだ。
今の世で失われたものは暗闇。
「もっと光を」でなく、「もっと闇を」の時代がやってくる。
何でもあるから何にもできない「今」から、
何にも無いから何でもできる「未来」が見える。
春先より始まった上演場所探し、浮遊する魂にふさわしい衣装、屋外でのケイコ。
試し試し作り上げた作品は、私の思っていた以上の出来だった。
お客の反応もよかった。
(私は出番以外客の後方から舞台を望む。)
こんなにも前がかりに集中した客の背は初めてだ。
思わず心の中は「ヤッターlとジャンプ。
また、出来もさることながら、役者一人一人がビックリするような長尺のセリフを自分のモノとして、
周りの自然と一体化し存分に輝いていたのが嬉しかった。