一年ぶりのブログです。
2020年は、1・2月の「演劇技術教室」、2月15日の豊田市美術館での「HAIKAI」パフォーマンスを終え、
今年に予定されていた6公演へ向け稽古にかかる矢先、得体の知れぬ疫病「コロナ」の大発生。
私どもの家業「芝居」は、生が一番。生の五感でしか味わえぬ生業である。
特に私の芝居は「全身全霊芝居」、「客席と舞台、混然一体」の「祝祭劇」などの肩書を持つ。
芝居イコール「三密合戦」である。
役者の目の動きが分かる空間〔密室〕で
全力を出し切り〔濃密〕
それを楽しむ人々〔密集〕がいる。
公演はおろか、稽古もままならぬ。
で、3月より全体稽古は一旦休止、その内公演も中止、延期と続き、芝居三昧の日々が芝居ゼロの日々となる。
となると生身の役者、ちょっと使わないとすぐくさる。
大切なは役者の日々の稽古。しかしこの稽古、家で一人で続けるのは中々つらい。
でもこんな時こそ、個の力をつける絶好の好機と、ハラプロの皆に私から手紙を書いた。その一部をご紹介します。
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皆さんへ、4月5日より「一人ケイコ」もしくは「一人ハラプロ」楽しんでますか。でもまったく一人でとなると中々、簡単では無いですね。
「コロナ」という得体の知れぬ不安と恐れ、気分はブルー、落ち込みます。私は日課である朝60分の「体操」はかかさず続けてますが、皆と一緒にケイコできないのがとてもつらい事だと思い知りました。
私の近況をお伝えします。
私の〈私一人でできること〉。
演るかどうかわからぬ「台本を書く」。
1本は完成。他3本程。モノにすべく妄想中。
コロナのおかげで出来た時間。アリガタクいただいて物書き三昧。暗い時世の憂さ晴らしにちょうどいい。物語りが常よりリアリティの有るように感ぜられる。とんでもない事に遭遇すると絵空事が本物に見えてくる。ナンでもない事がとても愛しく見えて来る。私は今3年分の台本を一年で書くつもりでイスの上にあぐらかいて作家をやってます。
〈一人ケイコでお悩みの方へ参考までに〉
私のモチベーションアップ方法
①身体…脱力体操の他に「筋力アップ」
腹筋・腕立て・スクワットを常の2倍に増やし、さらに楽に出来るようにする。数的達成感はうれしいし自信にもなる。鏡の前でポーズをとったりしてウットリしましょう。
そして「体操」の後に「ブトー」をプラスした。
通常、朝の体操40分、そのあと10分程「音ナシ即興ブトー」を創作する。気分もテーマも、全部即興、思いついたまま楽しくやる。「一本の作品」としてブトーする事、最後のアイサツまでキッチリやる事。
皆さんもぜひ勝手にブトーしましょう。そして後日、「即興ブトー会」を催したい。
②発声術…「一人勧進帳」
役者にとって一番「不要不急でない」大切なモノは、声である。芝居の醍醐味は、役者の生声。本息で腹の底から全身をふるわせないと気持ちワルイ。気持ちが伝わらない。身体的にも体幹を最も必要とするのは発声装置(腹)だと思う。
…4月20日。高架下のグラウンドで久しぶりに声を出した。勧進帳の富樫(トガシ)は出来た。次の弁慶になったらムセてせきが止まらない何回やってもムセる。音程を少し上げてようやく声が出せたけど一回やってハスキーな声になってしまった。ビックリした、こんな事は初めてだ。唾液が出ないのだ。…あまり無理せず、以後、暖かい時を選んで「一人勧進帳」。ようやく唾液もあふれる位出るようになり、毎日、夕刻の一人稽古を続けています。
時々、一人ぽっちになるって、正直な自分に会える時だなと思います。新しい自分の発見があります。人の世で何が起ころうと、変わらぬ自然が何と色鮮やかで生命力に満ちているか。水が空気が雲が空がカラスがアリがメダカが滴る葉脈が、朝日に透けて幸せな緑にまみれます。生命ってイイナーって思います。あまねく生命のひとかけらの自分、大切にしようって思います。
芝居できるってありがたいね。
原
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長々と紹介したのは、このコロナ禍の先にある芝居のあり方が、私にとってゼロからの出発になる気配を感じ、その出発の手紙でもあると思うからです。
「勧進帳の山伏問答」について・・・歌舞伎の代表的な演目で、中でも富樫と弁慶の問答のシーンは、対極にある2人の男、かたや富樫(水色の似合う涼しいイイ男)、弁慶(黒と茶の似合う熱血漢)の、全力を出し尽くしての究極の発声術、身のこなし方の演技技術が試される場。役者冥利又見物冥利に尽きる一場面。